
こんにちは、YSP富山です。
先日の「オイル交換予約制」のお知らせでは、中東情勢の影響について触れました。
しかし、当店の目の肥えたマニアックな常連様方から「おいおい、ヤマルーブの高級ライン(化学合成油)のベースオイルって、ぶっちゃけ韓国から引っ張ってきてるんじゃないの? なんで中東が絡むの?」という、非常に鋭い(そして嬉しくなるような)突っ込みをいただきました(笑)。
お待たせいたしました。今回は、一般ウケを一切無視して、バイクオイルの「原材料と流通のリアル」について、泥臭いところまで1歩も2歩も踏み込んでみようと思います。
1. 「化学合成油」の正体。API分類:グループIII(Group III)とVHVIの真実
バイク乗りの間でよく議論になる「鉱物油 vs 化学合成油」。しかし、プロやオイルマニアの世界では、オイルを「API(アメリカ石油協会)によるグループI~Vの5段階分類」で話します。
ヤマルーブの『プレミアムシンセティック』をはじめ、現代の高性能マルチグレードオイルの主役を張っているのが、「グループIII(高度水素化分解油)」と呼ばれるベースオイルです。
これは原油から不純物を極限までハイドロクラッキング(高度水素化分解)し、分子の形を完璧に整えたもので、業界では「VHVI(Very High Viscosity Index=超高粘度指数)」と呼ばれます。
「鉱物油由来だから100%化学合成油とは呼べない」というオールドファンも一部にいますが、現代のVHVI(グループIII)は、分子の安定性や耐熱性において、一昔前のグループIV(PAO)に匹敵、あるいは部分的には凌駕するほどの超高性能を誇ります。現在のプレミアムオイルの事実上の世界標準です。
2. 日本の高級ベースオイルのリアル:「韓国80%、中東20%」という供給構造
ここからが本題です。
では、その極上の「グループIII(VHVI)ベースオイル」はどこから日本に来ているのか?
実は、日本の高性能ベースオイル(グループIII)の約80%は韓国から輸入されています。
「えっ、韓国?」と思われるかもしれませんが、韓国(SK lubricantsやS-OILなど)は、世界最大かつ世界最高クオリティのグループIII(VHVI)ベースオイルの生産巨大拠点なのです。世界中の有名オイルブランドも、こぞって韓国製のグループIIIを買い付けています。
そして、残りの約20%を、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)といった中東の最新鋭製油所から輸入しています。この「韓国80%・中東20%」の絶妙なバランスで、日本の高性能オイルの土台が成り立っています。
3. なぜ「韓国が80%」なのに、中東情勢が緊迫するとオイルが危機になるのか?
ここが今回の「予約制」に繋がる、最もマニアックな物流のからくりです。理由は2つあります。
理由1:韓国の巨大製油所は「中東の原油」で動いている
韓国が世界に誇る高性能ベースオイル(グループIII)ですが、その原材料となる原油(ナフサや重質油)のほとんどは、結局のところ中東からの輸入に依存しています。つまり、中東で有事があり原油供給や価格がトリガーを引けば、韓国でのベースオイル生産ラインそのものが直撃を受けます。
理由2:世界的なタンカーの「玉突き事故(航路混乱)」
中東・紅海周辺の情勢が緊迫すると、欧州やアジアを結ぶタンカーが危険なルートを避け、喜望峰回りなどの遠回りを余儀なくされます。
すると、世界中で「タンカーが足りない!」「運賃が跳ね上がった!」という物流の玉突き事故が発生します。結果として、中東からの20%の入荷が遅れるだけでなく、韓国からの80%の定期便のスケジュールや運賃にまで強烈なパニックが波及してくるのです。
オイルは「ベースオイル」だけでは完成しません。そこにJASO(日本自動車技術会規格)の厳しいクラッチ摩擦特性(MA/MA2など)をクリアするための「特殊な添加剤パッケージ」をブレンドする必要がありますが、これも世界的な物流混乱の影響をモロに受けます。
だからこそ、YSP富山は「皆様の分」を囲い込みます
いかがでしょうか?
皆様の愛車のエンジンの中で、毎分何千回転、何万回転という過酷なシザース(せん断)に耐えているヤマルーブ。その背景には、中東の油田から韓国の超ハイテク製油所、そして世界中の添加剤メーカーが複雑に絡み合う、生々しい国際物流のドラマがあります。
一滴の供給が滞るだけで、当店の大切なお客様の「次の週末のツーリング」がダメになってしまうかもしれない。
だからこそ、私たちは世界情勢を先読みし、ご予約をいただくことで、「グループIII/VHVIの極上ベースオイルと、ヤマハ純正のブレンドレシピで守られたヤマルーブ」を、皆様のためにあらかじめ確実に確保(ロック)させていただく体制をとりました。
マニアックな話を長々と失礼しました(ベースオイルの話になると、僕らもついつい熱くなってしまいます笑)。
愛車のポテンシャルを100%引き出し、この夏も安心して回せるオイル管理のために。
次回のオイル交換、皆様からのクオリティの高い「ご予約」を、ピットでお待ちしております!